7月2日(土)13時30分からアスティ45研修室にて表記の内容の
講習会を講師に山梨知彦(日建設計)さんをお向かえして行いました。
当日は46名(JIA会員14名、事務所所員など設計者21名、学生7名)
が参加しました。山梨知彦さんは10年以上前から3Dに取り
組んでをり、現在はBIMによる設計の第一人者でもあります。
彼がこれまで取り組んできた最先端の設計手法や設計思想を惜しげ
なく解説していただけました。以下が講演会の内容です。
■BIMで建築はどう変わるか?(をデザイナーの立場から
考えてみた)
生産効率向上のためのBIM(施工のためのBIM)
↓
設計品質向上のためのBIM(設計のためのBIM)
↓
マスカスタマイゼーションのためのBIM(建築生産のための
BIM)
↓
ライフサイクルビルディングマネージメントのためのBIM
(マネージメントのためのBIM)
↓
エンドユーザー、社会のためのBIM
BIMによる建築ビジネス業界の新しい構図
■BIMの最小限の定義
・3次元の形状情報:建築の形状を定義する、3次元の形状
情報を持っている
・建築情報:形だけでなく、属性というさまざまな建築情報
を同時に持っている
3次元の建築のデーターベースである
・デジタル:形状情報も属性もデジタル化された情報であり、それ
ゆえにコンピューターで処理することで、さまざまな利用が可能で
ある
■DTPと印刷出版業界
グーテンベルクの活版印刷=大量生産の代表的存在としての
印刷技術だったが、DTPにより印刷出版業界の生産技術の変
貌が生産自体を変革した。
・大量生産から、少量多品種やオンデマンド生産へ移行
・DTPは、出版界の生産プロセスを、そして産業自体を変えた
・建築においてDTPと同じ衝撃をもたらす技術とは何か?
・建築の生産技術に新たなパラダイムをもたらすものは何か?
■建築を生み出す技術に、コンピューターとICTが大変革を起
こそうとしている
・生産技術の変革:デジタルファブリケーション
・設計技術の変革:コンピューターシミュレーション
・生産技術の変革:コンピュテーショナルデザイン、アルゴリ
ズミックデザイン
・総合技術の変革:BIM(Building Information Management)
■デジタルファブリケーション
木材会館で木材の追掛け大栓継ぎの加工に応用。CNCカッター、
少量多品種、正確、経済的に実現可能になった新しい生産の
パラダイムの上に、新しいミニマルや経済性生まれる
■シミュレーション:新しい建築を生むための「試行錯誤」
する技術BIMの3Dデーターを使いあらゆるシミュレーションが
可能になる
■コンピュテーショナルデザイン、アルゴリズミックデザイン
:建築のジオメトリ自体の生成に関する技術ジオメトリの生成
自体が、コンピュテーショナルなプロセスに介入により、大きく変質
している
■BIMとは建築をつくる/考えるためのデジタル情報のプラット
ホーム建築の新しいパラダイムを支える、設計から生産をデジ
タルと言う共通言語で結ぶプラットフォームとなる技術
■私たちの試み(実作品での取り組み内容について説明)
・木材会館:BIMによる設計の高品質化
デジタルファブリケーションの応用による、規格木材の部材の
マスカスタマイゼーション化
・ホキ美術館:BIMによる意匠、構造、設備の総合
シミュレーションによる設計の高品質化
デジタルファブリケーションの応用による、照明のマスカスタ
マイゼーション化
・ソニーシティ大崎(NBF大崎ビル)
シミュレーションによる新世代の環境建築の構築
デジタルファブリケーションの応用による、異業種の建築への
参入
・TOHO GAKUEN SCHOOL OF MUSIC
これまでの箱状音楽学校からの解放形態を目指し、大きさの
異なる大中小の練習室を3層建築の積層タイプのシミュレー
ション
・On the water :水辺に屋根を浮かせるために
水辺の傾斜地を3Dで入力し、湖と対岸の山の見えるスロープ
による、アプローチルートを探る
・シミュレーションによる多目的最適化
■今起こっていること
・BIMによる施工の効率化(施工者のためのBIM)
・BIMによる設計の高品質化(設計者のためのBIM)
・初歩的なコンピュテーショナルデザイン
・初歩的なデジタルファブリケーション
・新しい職能の誕生
■近い将来起きるであろうこと
・BIMによる高度なコストマネージメント(クライアントのための
BIM)
・高度なコンピュテーショナルデザイン
・多元的最適化シミュレーションによる高品質な設計
・ロボティクス等による高度なデジタルファブリケーション
・BIMとICTによる業界の再編、分離発注、 CM、国際標準化
■目指していること、将来起こりそうなこと
・BIMによる設計、施工、ビル管理、運用の総合化(BMの上の
3つのフロー、人、エネルギー、ファシリティ)
・BIMと3つのフローによる「建築ビックデータ」を利用した
新ビジネス、業界の再編、輸出コンテンツ化
・BIMアプリケーションを通した、設計基準や性能基準の設定
(法、規範、市場、アーキテクチュア=コード)
・設計事務所のソフトウエアハウス化、インフラのソフトウエ
ア化(エンドユーザー、社会のためのBIM)
以上
2時間という短い時間でしたが、内容の濃い講演会でした。
北海道の設計事務所でもBIMはこれから益々、必要な設計手法に
なっていくと実感させられました。(JIA 弓良芳雄)